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バンダリズムではなく(エディンバラ9,10日目)

この二日間も天候には恵まれていた。長袖シャツにジャンパー2枚重ねという装いではあるけれど。前日寝不足だったので、何をするわけでもなくホステルでだらだらしていたら、あっという間に午後3時ごろになってしまった。

9日目の最初のプログラムはAuto Auto。ドイツのパーカッショニスト、Christian von RichthofenがRolf Clausen (交代でKristian Bader)と共に、車一台を楽器に見立て、バッハ、チャイコフスキーから、Motorheadという幅広い音楽に乗せて、斧、チェーンソー、バールなどをフル活用して車を完全に破壊するのだ。イギリスではプレミアのショーで、結構色んなメディアでも取り上げられていたので興味を持っていた。車を破壊するという行為を美しく、芸術として行うのが可能なのか!と目からうろこの思いで1時間のショーを満喫した。

幕が開くと、スモークの中に車が登場。新品に見える。何色ものライトでライトアップされて、二人のタキシードを着た男性があらわれる。一見車の展示ショーにも見えてしまうような感じ。最初はいとおしそうに車のボディーを撫で、やがて、ドラムのようにボンネット、ガラスなどをたたき始める。車の箇所によって奏でる音が違うのを利用して、二人のパフォーマーが調和の取れた音を奏でる。次第に演奏はダイナミックになっていき、フロントガラスは叩き割られ、チェーンソーがフロントドアを襲う(それによって火花が2メートルほど飛び散り、またこれが美しい)、車の上部(鉄)がめくれてカール状になる。サイドミラーも跡形もない。これらの破壊する順番、やり方は全て緻密に計算されていて、例えば、車上部のめくれた鉄板は、そのあとで、ひらひらになった薄い鉄板を振動させて音を奏でるようになっているのである。ステージ上を所狭しと激しく動きながら、一見手当たり次第に感情の赴くままに破壊しているように見えて、相当練習を重ねてこの順番にたどり着いたかのように見えた。 二人のパフォーマーは狂気に取り付かれたようで、恐ろしくもある。そして美しくもある。私は「時計仕掛けのオレンジ」の殺人のシーンと重ね合わせてみていた。

ショーが終わったあと、Christian von Richthofenさんに話しかけた。こんなショウ、今までに見たことがない。そもそも車を破壊するパフォーマンスなんて、どうやって思いついたんだろう? 聞きたいことはいろいろあった。彼は、これまでにコンサートのパーカッショニスト、舞台俳優などで活躍していたのだが、一方でソーシャルワークのボランティアもしていた。Vandalism(バンダリズム;芸術品や公共物などを意図的に破壊する行為。芸術としてある程度認められているGraffiti;グラフィティと異なり、こちらは市民権を得ているとは言いがたい)で、路上の車を破壊するティーンエイジャーたちに、「自分のところに来て一緒に車を壊そうよ!」と、壊れた車を使って思う存分彼らに車を壊させたそうだ。それをやがてパフォーマンスとして、ティーンエイジャーと共に舞台で車を壊すというものに発展したのだという! 若者のやり場のないエネルギーを良い形で昇華させたパフォーマンスだと言える。現在のパフォーマンスを生み出すまでに破壊した車は300台以上。パフォーマンスで使用している車は新品に見えたが、全て壊れた車をきれいにして使っているそうで、今日の舞台の車も外観は異常なく見えるが、エンジン部分が壊れてもうつかえない車だそうだ。

ドイツの名産品といえば車…。そんなドイツでこんなパフォーマンスをしたら一体観客はどんな反応を示したのですか?と聞くと、「ドイツ人にとって車は大切なものだから、“えええーーー”って驚く人たちが沢山いた」のだそうだ。そりゃそうだろうな。アイデアだけ聞くと驚くかもしれないけど、パフォーマンスを見れば考えは変わるだろう。 パフォーマンスの一部はYouTubeでも見られる。

http://www.youtube.com/watch?v=M2vtJ16hPvQ

その後は20時20分からRichard Herringというコメディアンのギグを観にいった。「Oh F**k, I’m 40!」というタイトルで、40歳になったばかりと言う彼が、「40歳になった自覚がまったくなく、心も外見も未だにティーンエイジャー」と、自分のファッション(人工的に色落ちさせたジーンズ、まったく出来ないのにスケボーを担いで歩く)などデスペレートに語るので面白かった。

40歳になった今、かつてないほどに性欲もあるのだそうで、最近の出会いなども話していた。日本もそうだけど、コメディアンってもてるんだろうな! 見た目は普通以下(?!)でも、何しろ面白い。そして職業的に生活が不安定な分、例えば40歳ぐらいでも全然落ち着いてない。20歳ぐらいのガールフレンドがいると話すコメディアンの多いこと!(特に自慢したいからかもしれないけど!) まあ、20代後半の女性だったら、現実的に結婚したいと考えてシビアに男性を選ぶから、こういうジャンルの男性はまず却下するだろうが。

その後は、友達に「絶対見て!」と言われていた、「Puppetry of The Penis」というショウを22時5分から見た。直訳すると、ペニスの人形劇。どういう内容かはまったく知らなかったが、300席近くある会場は満席。客の8割がたは女性で、しかも熟女のようなマダムが半分近くを占めていた。

男性ストリップか何か? と思っているうちにショーが始まった。なるほど…。男性二人が全裸になって、(自分でもなぜか分かりませんが英語で書きます)、penis, ball, skinを使って、パフォーマンスをするというもの。例えば、「この中でオーストラリアから来たお客さんはいますかー?」「オーストラリアを代表する動物と言えば?!」と片方の司会者が話している間に、もう片方は後ろ向きになって一生懸命何かしている。ぱっと振り向くと、Ballの皮膚をびろ~んと広げて袋状にして(なるのだ、これが!)そこにちょこんとPenisの先端を覗かせて、お母さんの袋に入っているカンガルーの赤ちゃんの出来上がり!と言うような感じ。

会場にはカメラが設置されて、彼らのその部分が大きくスクリーンに映し出されて、そのたびに会場は大爆笑。特に奥様方の喜びようといったら…。いやいや女性は年をとるほどに元気になっていくようで。 そのほかには、ビッグマック(Ballの間にpenisを挟む)、ヨット(Ballの皮膚を三角形に広げてマストに)、Penisに小さなシャワーハットのようなものをかぶせて、エリマキトカゲに…。なんだか体育会系の部活の男子生徒が、夏合宿で一発芸をやるような感じ。エロさはまったくなく、ひたすら明るい感じ。女のストリップだと、膣の中からピンポン玉を出したりするパフォーマンスを日本でも見たことがあるけど、私は男性のPenis芸をこれまでに見たことがなかった。男性もこういうことが出来るのですね! でも、これらの芸はヨーロッパ男性に多い包茎じゃないと難しいだろう。皮も大事な芸の要素なのだから。

フリンジ全体にいえることだけれど、パフォーマンスが時間通りに始まったためしがない。大抵10分は遅れる。そして終わるのも10分はずれる。前にインタビューをさせてもらったが~まるちょばっとさんによると、その会場で毎日やるプログラムはフリンジ期間中ずっと同じ。なので、一パフォーマンスの音響、照明などは毎日同じなのだ。でも現場のスタッフが毎日違う。それで段取りが悪くて、どんどん時間が押してしまうのだと言う。でも、きちんとした会場は毎日同じスタッフが完璧にこなし、時間が押すことは少ないそうだ。200を越える会場があって、会場のスタッフの質は場所によってさまざま。Puppetry…は予定より20分以上もオーバーして23時半になってしまい、私は次に予定していたパフォーマンスを見られなかった(涙)。フリンジの予定を組むときは、次の会場との距離を確認して、遠いときは空き時間を十分にとっておくことをおすすめする。流しのタクシーを捕まえるのは至難の業だ。タクシーのドライバーに頼めば、タクシー会社の電話番号が書かれたカードをくれる。それでも、電話して10分以上待たされる場合が多い。この日はあきらめて家に帰った。

さて、エディンバラ10日目。不本意にも十分睡眠をとった私は朝から元気だ。山にでも登りたいぐらいに。で、山に登ることにした! 友達に勧められていたArthur’s Seatという見晴らしの良い崖だ。私のホステルがあるCowgateという場所から歩いて10分ほどで、崖のふもとに到着。でも、そこから崖の頂上まではなだらかな山道を1時間以上かけて登らなくてはならない。でも登る価値アリの素晴らしい眺めが待っている。がけっぷちでクライミングをしている男性を発見。話しかけてみると、Arthur’s Seatは数百万年前(要確認…)に火山が爆発して隆起して出来たものなのだそうだ。エディンバラ城の高台もそう。ここで毎日クライミングをしているのだって。私自身についても、どこから来たのか?何をしているのか?ときかれた。「日本から来て、ロンドンで勉強しています」と答えた。こう言うと、お約束で聞かれるのが「ロンドンとここどっちが好き?」-私はいつも「もちろんここです!」と答える(本当はどちらにもそれぞれ良さがあるし、まったく別物なので比べられないと思っている)と、ものすごーーーく嬉しそうにされる。ああ、彼らは自分の街が大好き(ロンドンは嫌い)なんだなあ、と感心するのだ。

Arthur’s Seatのふもとには2004年に新築されたスコットランドの国会がある。この日はちょうどOpen Dayで、普段は一般公開されていないような場所まで入ることが出来るので、行って見ることにした。この建物、よくControversialと表現される(と前に書いたかも)。理由は、建設に予定より多く費用と時間がかかってしまったこと、デザインがモダン(過ぎる)ことなどからである。実際、概観も中身も日本やイングランドの国会とは大違いで、コンテンポラリーアートの美術館のようである。天井が高くて、自然光を多く取り入れられるようなデザイン、木をつかったやわらかい感じ…etcわたしはこの建物、個人的に好きである。

中にはスコットランド各地の名産品と、スコットランド国会のロゴマークイリのオリジナル商品を扱ったショップがあって、内容はかなり充実。ウィスキー、チョコレート、ゴルフボール、マグカップ、カシミヤ製品など値段も手ごろで、お土産用にウィスキーのみにボトルサイズまで用意されている。国会内にCreche(最初のeの上にはアクセントつき)があるのには驚いた。Crecheはフランス語が語源の託児所だ(アメリカ英語ではday nursery)。

国会ではFestival of Politics(この時期エディンバラは何でもフェスティバルとなる)を開催中で、World Press Photoのエキシビションがあった。政治、スポーツ、アートなど各分野の優秀作品が展示されている。

一度ホステルに戻ってから、17時にScottish Dance Theatre のパフォーマンスを観にいった。会場はZoo Southsideという場所で、元は教会、現在はコミュニティーシアター、フリンジ期間中はフリンジ会場として使われている場所だ。入場を待つ列には、英語圏以外のヨーロピアンらしき人々で溢れていた。Scottish Dance Theatreはスコットランドを代表するダンスカンパニーで、今回の振り付けは2007年Peter Darrell Choreographic Awardを受賞したVanessa Haskaによるもの。彼女はキプロスに生まれ、現在はロンドンを拠点に活動。今回の作品「Sorry for the missiles(ミサイル)!」は、Gazaでの武力衝突にインスパイアされて作った作品で、作品全体を通して戦時下の暗さが伝わってくる。

舞台の最初は学校の教室のようにイスが並べられて、楽しそうに歌う男女。英語ではないので何を歌っているかは分からないが、一人の女の子が高らかに何かをうたい始める。言論統制に引っかかったのか、彼女は男二人(私服軍隊のような)によってどこかへ連れ去られてしまう。一緒に歌っていた中も、一人、二人と消えてなくなり(隠れたのか、それとも殺されてしまったのかは不明)、やがて教室には誰もいなくなる。舞台上でヒステリックに笑う女性、引き離される恋人たち…。一体何のために戦争をしているのか? 戦争の犠牲になるのは普通の市民…という思いでいっぱいになる。セリフらしいセリフはない舞台だが、ダンスだけでそのメッセージは十分伝わってくる。

舞台の後ホステルに戻ると、Janeから電話がかかってきた。「今ギグの合間で時間があるから一緒に飲まない?」とのお誘いだ。今日彼女が一日中いるのはコメディーの中心地、Pleasance Courtyardだ。ここで彼女は昼3時から夜12時までの間に5つほどのコメディーを見ている。彼女は明日ロンドンに帰るので今日が最後(彼女は全16日間の長丁場だった)。私も彼女に会いたいと思っていたのでグッドタイミングだ。3日ほど会っていなかったのでお互いに近況報告をした。

「今日何するの?」と聞かれたので、Ricky Gervaisを見られない私は「何も用事がない」と答えた。「じゃあ、一緒にコメディー見る?」と誘われた。でも、次のショウまで後10分。私はこのショウをPleasanceのプレスにチケットを申請していたが、「手配できません」(理由は不明)といわれていた。JaneがPleasanceに電話したらこんな直前なのに「OKです」だって!「You see the power!?」とJaneはおどけて見せた。それで急遽Alex HorneとMark Olverの二つのギグを見ることにした。二つともJaneの顔見知りのコメディアンだった。 定員30人ほどの小さな会場に、皿に10人ほどの小さな観客…。フリンジは後半が盛り上がると聞いていたのに、これは一体どういうことなんだろう? Janeが「“あれ”がフリンジのお客を全部持って行っちゃったのよ」とある踊りをした。それはRicky GervaisがThe Officeというドラマの中で踊った伝説の踊り。私が大好きなパートだ。

http://www.youtube.com/watch?v=AKpybGYozeE

(あるインタビューで「インプロで30秒踊ったら、その後30分疲れて動けなかった」と答えている)

フリンジの大会場でも300人ぐらいなのに、エディンバラ城は8000人。それは、フリンジに来たコメディー好きのお客さん8000人をRickyが奪ってしまったことになる。このことは他のコメディアンも自分のギグの中で言っていて、例えばSimon Amstellは「SHIT!」と叫んで出て行ったお客に対して、「自分のギグは12ポンドだよ。誰かさんは37.50ポンドなのに。おトクでしょ?」と言っていた。このフリンジ史上初めてのエディンバラ城ライブ、同業のコメディアンたちにはあまりよく思われていないようだ。

思いがけずこの日の後半はコメディー三昧になった。23時から「XXX Comedy feat Josh Howie」、深夜1時からは「Late’n’Live」というコメディーショウをJaneと一緒に見た。Late’n’Liveはフリンジのベストコメディアン3組ほどのショウが見れるもので、出演者の発表は直前になるまでされない(でもコメディアンは選りすぐりのものばかりなのではずれはなさそうだ)。昨日はWe are klangというスケッチのコメディアンたち。彼らのスケッチは分かりやすくて面白いので、日本でも受けるかもしれない。ちなみにJaneは今日(27日)の出演者情報を知っていて「Daniel KitsonとDavid O’dohertyだから、発表されたらすぐにチケット売り切れるよ」と言われた。なので、その場で買っておいた。(でも、私は28日の朝9時までにホステルをチェックアウトしなくてはいけないから、夜3時までコメディー見たらかなりきついかも…) そんなわけでだんだん終わりに近づいているフリンジフェスティバル。あっという間だったような、長いような。写真は後日追加します。

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コメント

ハガキ届きました〜^^)メールだとすぐですけど、ハガキがはるばる海を越えてエジンバラから、と思うと楽しいものですね。どうもありがとうございました!
ブログではいつも詳細なレポート楽しませていただいてます・・・これ、一日分書くのにどのぐらいかかるんでしょうか?この密度の濃さ、すごいですね。

投稿: あらい | 2007年8月28日 (火) 13時37分

あらいさん
こんにちは! はがきが届くの早いんですね、1週間ぐらいかかるんだと思っていました。無事届いてよかったです。ブログは大体1~2時間かけて書いてます。後になると、やったことは覚えていても、そのときの自分の心情までは思い出せなくなってしまうので、なるべく詳細に書き記しておこうと思って。ショウがどうだったのかよりも、自分が思ったことを多く書いてしまっているような…。写真、動画などのリンクを後日追加して膨大な叙事詩にしようと思っています!

投稿: yumiko | 2007年8月28日 (火) 19時51分

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