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オックスフォード雑記1

昨夜無事オックスフォードから帰宅した。へとへとで、12時間以上一度も目覚めず寝てしまった。まだ疲れてて、学校を休んでいた間の宿題があるのに手を付けられずにいる。宿題のお題目は「名誉毀損」・・・こんな疲れた日にやる気は出ない。

さて、オックスフォードまでの100キロウォーク、この5日間で感じたことをざっと記しておこうと思う。

前日の日曜日は、誤って夕方にコーヒーを飲んでしまったため、夜寝付けず、睡眠不足のまま月曜の朝を迎えた。事前に約10人が参加すると聞いていたけど、月曜の朝に行って見ると、すごい人の数。ウォークに参加する人、見送りに来た人、ブライアンたちが留守の間にテントやディスプレイを守るためにテントに泊まる人などなど、全部で4~50人。

ウォークに参加した人は、下は8歳の女の子から、上は60代の女性までの総勢17人の大所帯。リチャードという人が、車を手配して、私たちが歩く行程にあわせて、荷物を泊まる教会へ毎日運んでくれると聞いていたので、私たちはテントや重い荷物を運ぶ必要なく、必要最低限の荷物だけ持って歩けばよいので、かなり助かった。

私は私が普段から使っているハードディスクタイプのビデオ(7時間半の撮影が可能)、バッテリー3つ、バッテリーチャージャー、以前ブログに書いたスーパーで知り合ったウィル(日本人の奥さんと日本で暮らすために1週間前に旅立った)がくれたミニDVタイプのビデオカメラとミニDVテープ6本、携帯電話の充電器、そして通常の旅行用具、寝袋、マットレス、防寒着、雨具などで、ボストンバックはパンパンに。多分15キロぐらいの重さがあったと思う。

他の参加者の荷物はどうかというと、あらためてピースキャンペイナーの荷物プライオリティってどうよ、と思った。ピースフラッグを長い竿にくくりつけたもの(これは半数以上の人がやっていた)、メガホン、リボンがくくりつけられたティディーベア、ローラブレード、グアンタナモ・ベイ(テロリストを収容する悪名高い刑務所で、オレンジ色のジャンプスーツで有名)の囚人服などなど。少しでも荷物を少なくしたいと思うのが、旅行に行くときの大前提だと思うのだが、ふつーの人には邪魔以外の何者でもないものをあれこれリュックに詰めているのが可笑しかった。

ロンドンは渋滞解消と、地球温暖化防止のため車の利用を減らさせようとして、ロンドンの中心地に車で乗り込む場合には「congestion charge」というのを毎回払わねばならない。8ポンドするのだから、毎日必要に迫られてロンドンをドライブする人にはかなりの出費だ。で、このコンジェスチョンチャージを節約するために、リチャードはコンジェスチョンチャージのかからないエリア(マーブルアーチ。ハイドパークのそば)に車を止め、私たちは最初の数マイルを荷物を持って歩くことになった。思いがけず荷物を持って歩く羽目になった私は、その約1時間半のウォークで初日から消耗。8ポンドぐらい、私が払うよ!

やっと荷物を車に載せて、私たちは歩き始めた。夕方4時ごろになって、みんなおなかがすき始めて、ご飯を食べようという話になった。参加者17人のうち、イギリス人が12人で、あとは、アイルランド人1人、カナダ1人、オーストラリア1人、チャンネル諸島(でも幼い頃にロンドンに移住)1人、そして日本人の私1人。つまり、圧倒的多数はイギリス人で、ブライアンはじめ、みんなが「フィッシュアンドチップスが食べたい」とかなりデスペレートな心理状態になっていた。あちこちに美味しそうなレストランや、カフェがあるのに、それらを素通りして、フィッシュアンドチップスの店が見つかるまで歩き続けているのだ。(そんなにフィッシュアンドチップスが好きなんだ・・・)と私は感心したのだけど、これがその後毎日昼食のたびに続いたので呆れてしまった。イギリス人の食生活はホントに絶望的。

私は風景が変わるたびにビデオで撮影しながら歩いていたのだけど、撮影しながら歩くって、すごく体力に負荷がかかるということを実感。重い荷物はリチャードの車に預けたとはいえ、私のかばんは、ビデオ2台、予備バッテリー、テープ、レインコート、水とかで、なにげに重いのだ。そして、撮影するには立ち止まって数十秒から時には数分その場にいる。歩きながら撮った映像では、ブレアウィッチならぬ船酔い映像になってしまうからだ。そして時には歩いている列のずいぶん前まで走っていって、彼らが通り過ぎる様子を撮影。同じペースでずっと歩くなら良いけど、撮影するためには走ったり、とまったりを繰り返すので、その分体力がかかるのだ。しかも、毎日数時間の浅い睡眠で、日中は10時間坂道を登ったり下ったりするのだから。しかも、精神的にもハードだ。撮影するとか、取材するって言うのは、常に自分のアンテナをONの状態にしておくことでもある。チャンスを逃さないように。それって、神経が休まってない。でも、このピースウォークを記録するということは、歴史的に意義のあることと自分に言い聞かせて結局自分がとったビデオは全部で10時間ほどになった。普段パーラメントスクエアやデモの撮影を1日やるなんて、寒さを我慢するだけで、別に体力は要らないのだが。これが、ヒマラヤの登山や南極横断を撮影するクルーなんていったら、すごーーーく大変なんだろうな。うーーん、こういうことを書くと実現してしまいそうで怖いからやめておこう。とにかく撮影は体力勝負。でも、今回これをやり遂げたことで、自分はこの先大抵の大変なことはきっとやり過ごせるだろうと思えたりする。

参加者の内容は、ブライアンのサポーターの他に、最近日本の国会でも話題となった「9・11はヤラセ。内容を再検証せよ」という活動をしているWeAreChange UKというグループから5人、イギリスの政治犯がグアンタナモ同様、十分な証拠なく収容される刑務所に対して、囚人を解放するように運動している女性が一人(中には容疑だけで、裁判されることなく6年以上も収監されているアラブ系のイギリス人もいるそうだ)、スクウォッティングをしながらミュージシャンとして活動している男性が1人、メディアプロダクションを学んでいる学生1人。

1日目は18マイル、2日目は16マイル、3日目は18マイル、4日目は10マイルを歩いた。3日目以外はQuaker(クウェーカー)教徒たちのミーティングプレイスに宿泊。クウェーカーはクリスチャンの一派だが、17世紀にイギリスで始まった比較的新しい宗派で、信者の数は多くはない。「教会」とは言わずに、「フレンズ・ミーティング・プレイス」として、イギリスの各都市に信者たちの集う場所を設けている。誰かの家のようなキッチンやリビングなどが備わっているのが特徴だ。彼らは私たちのために朝食や夕食を用意してくれた。

一度、オックスフォード手前の都市で、クウェーカーの夫婦が「うちはここから車ですぐそばのところにあるから、お風呂に入りたい人はどうぞ」といっていたので、私は興味本位で彼らの家に行ってみた。その老夫婦は、風呂の順番待ちをしている私たちにあれこれ世間話をしていたのだけど、私は彼らの話を聞いていて、ちょっと複雑な気持ちになった。彼らはすごく宗教に熱心で、見返りも期待せず食事などを十分に振舞ってくれて、風呂まで入らせてくれる。愛に溢れた人々だ。ボランティア活動にも熱心。クウェーカーはイギリスで唯一刑務所を訪れることを許されている宗教団体なので、彼らは週に2度刑務所の囚人を訪れて、彼らと会話をしたり励ましたり、手紙を書いたりしているのだという。「今日会った囚人の○○は、すごくかわいそうな幼少時代を送ったの。実父に性的虐待をされて、義父にも性的・身体的虐待をされて・・・。詳しい虐待の内容はここでは言わないわ。彼は女性をレイプして12箇所ナイフで指して殺したという罪で服役しているの。でも、すごくまじめで、本当に普通の人なのよ」・・・。私は言い方は悪いかもしれないが、彼らの話し方を見ていて、これは彼らにとって小説よりも面白い道楽なんじゃないか、と思った。6人の孫がいて、ほぼ人生の役目を終えて、静かなつまらない田舎で、きれいで何不自由な生活をしている彼らの人生は、恐ろしく退屈なのだ。刑務所を訪問して、囚人の話を聞く・・・その囚人の話が哀れで、悲惨で、恐ろしければ恐ろしいほど、彼らにとっては雑誌を読むことなんかよりよっぽど面白いリアルストーリーなのだ。これはジャーナリストの精神に似ている。「そうなんですか・・・それはひどい・・・で、一体彼は貴女の体に何をしたのですか?」と、同情を浮かべた顔の下から好奇心を覗かせて・・・。

私は自分が感じたことをブライアンたちに言ってみた。彼らも敬虔なクリスチャンだから、もし気分を害したらどうしようと思ったけど、私はこういう偽善っぽい親切心に溢れた人たちってある意味すごく興味があるので、ブライアンたちはなんていうかなと思って。そしたら、ブライアンは意外にもすごく同意して「そうそう! パーラメントスクエアに来る人たちもそう!”Hi! Brian! 最近どう?警察とはあれからどうなったの?”みんなエンターテイメントのために自分たちに話しかけるんだ。心の底から自分たちの活動に賛同しているんじゃなくてね」と。私も興味本位で話しかけた一人としてギクっとした(汗)。

今日はここまで!

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